【第3回】街の顔に“表情”を

街が動いている、と感じるときがある。

見上げる看板の「当店自慢!土用うなぎ」という文字がふっと「昼うな重定食1500円」に変わったりするときである。

商店街の看板は、街のアクセサリーだ。美しい看板はじっとしていてもきれいだ。だが動くと生き生きしてくる。この発光ダイオード(LED)を備えた電子ディスプレー看板は、動くのである。光を放ち、文字やイラストを動かし、人々に語りかける。

街が動けば、楽しさは増す。電子ディスプレーの表示は至るところにある。銀行ロビーで「有利な定期預金」を、病院で「正しい薬の飲み方」を知らせてくれる。役所では「早めに投票を」と呼びかけ、工事現場では「足元にご注意」と教えてくれる。

「今度のミュージカルは楽しめた」と喜ぶ人もいる。海外ミュージカルの日本公演で舞台の両そでに電子ディスプレー装置が付いていて、日本語の字幕スーパー が出た。外国語の歌やセリフにとまどうことなく、タイミングよく笑ったり拍手したりできた。

パトカーにも電子ディスプレーがついている。拡声器代わりに、光る文字で、ドライバーに運転の不注意を気づかせる。

街が、電子ディスプレーによってやさしい表情を持ってきた、とも言える。

電子ディスプレーのシェアナンバーワンを誇るメーカー「ビッグサンズ」は、先に紹介したように「喜んでもらう喜び 己(おのれ)もよろこびたい」を社是とする。

いくらかでも喜んでもらえるようになったかなと村田三郎社長は、ひとりうなずくことがある。

1987年、村田社長ら11人の脱サラ・グループが資本金570万円で設立した。いま資本金5億1399万円。3期連続の2けた増益である。

20年間に阪神大震災などで2年だけ赤字となったが他の年は順調。「20試合で18勝2敗」と、村田社長は独特の表現でいう。

この間、だれも乗り出さない、いわば普及率ゼロの分野へ社業を展開した。ベンチャーとして当然である。アイデアのひねりだし、お得意さんとのつながり。ベンチャーとしてならではの苦労を味わうなかで、1つだけ、握りしめてきたものがある。

「楽しみ」である。

これは自分たちが望んだ事業だ。いやいや選んだのじゃない。モノを作りだす楽しみ。それを自分たちで求めてきた。社名の「ビッグサンズ」も、欠点だらけのやんちゃな子供たち、という意味である。その楽しみだけは手放すまい。

だから社内に渋い顔はない。忙しさに緊張する顔はあっても、底に明るさがある。

それにしても、なぜだろう。巷は不況に苦しむ声が満ちているというのに。

ビッグサンズの、「これまで」と「これから」を知れば、わかるかもしれない。

(村上順一郎)

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